暴行問題の責任を取り、大相撲の横綱日馬富士(33)が土俵を去る。警察の捜査が進み、日本相撲協会の調査が終わる前の決断。親しい関係者には、心身の疲れを訴えていた。29日午後に予定されている記者会見で、自らの思いを語る予定だ


 「疲れ果てた。もう精神的にダメです」

 29日午前1時ごろ、伊勢ケ浜部屋の後援者は福岡県内に滞在中の日馬富士本人から電話でこう告げられた。そして、現役引退の意向であると伝えられた。

 日馬富士が暴行を認めたのは約2週間前の今月14日。その後頻繁に連絡を取り合ってきたこの後援会関係者は、日馬富士本人が数日前まで、日本相撲協会の調査結果を待って進退を判断するつもりだろうと認識していた。ただ一方、電話口での様子から、「日に日に元気がなくなっていった」とも感じていたという。

 27日に東京・国技館であった協会の横綱審議委員会(委員長=北村正任・毎日新聞社名誉顧問)では、協会に対し日馬富士に厳しい処分を求める意見が大勢を占めた。横綱の不祥事を巡っては、2010年に日馬富士が慕っていた同じモンゴル出身の朝青龍が、知人への暴行問題の責任を取って現役を退いている。日馬富士も同じ形で土俵を追われる格好となり、この関係者は、「こういう形での引退になってしまい、本当に残念です」と無念さをにじませた。

 福岡県太宰府市にある伊勢ケ浜部屋の宿舎周辺では、29日早朝からテレビカメラや記者が集まった。しかし、日馬富士は姿を見せていない。

 来年初場所の番付編成会議が行われる福岡国際センターにも報道陣が押し寄せた。日馬富士の師匠で、審判部長を代行している伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)が会議に出席するためだ。しかし伊勢ケ浜親方は午前9時前に車で到着すると、報道陣の呼びかけに応じないまま会場入り。会議終了後も無言のまま車に乗り込んだ。

 この問題では、危機管理委が殴られたとされる幕内貴ノ岩(27)への聴取を要請しているが、師匠の貴乃花親方(元横綱)が貴ノ岩の体調不良を理由に拒否。調査が難航している。

日馬富士の暴力問題の経緯

10月25日 秋巡業で鳥取市入り。その夜、日馬富士貴ノ岩に暴行

  26日 日馬富士貴ノ岩も参加して鳥取市での秋巡業開催

  29日 秋巡業の全日程終了後、事件を把握した貴乃花親方鳥取県警に被害届を提出

11月2日 相撲協会が鳥取県警から連絡を受けて事件を把握

  3日 相撲協会からの連絡で伊勢ケ浜親方が事件を把握

  5日 貴ノ岩福岡市内の病院を受診、9日まで入院

  10日 取組編成会議後、貴ノ岩の休場が判明

  12日 九州場所初日

  13日 9日付の貴ノ岩の診断書が提出され、相撲協会が公表。「頭部骨折や髄液漏の疑い」などを含む内容

  14日 日馬富士が暴行を認め謝罪し、休場。相撲協会が事件を初めて公表

  17日 鳥取県警日馬富士を事情聴取。相撲協会が貴ノ岩の負傷について「髄液漏の事実はない」とし、頭部骨折も確認できず、「疑い」だったと公表

  19日 相撲協会の危機管理委員会が日馬富士を事情聴取

  26日 九州場所千秋楽。優勝した横綱白鵬が「日馬富士貴ノ岩を土俵に上げてあげたい」と発言

  27日 横綱審議委員会があり、北村正任委員長は「非常に厳しい処分が必要という意見が委員会全体であった」と発言

  28日 鳥取県警が暴行時に同席した白鵬から事情聴取

  29日 日馬富士が引退届を提出